愛が消えたことを思い知った時の話

エッセイ

この人は私のことを、本当に愛してるんだな
そう感じる瞬間ってある。

私の場合、それは相槌。
例えばクイズ番組を一緒に見ていて、正解を答えた時の
「ホンマに賢いなあ」
今日あった出来事を話した時の
「なんでそんなにいろんなことが起こるん?」
思いついたこと、考えたこと、感じたことを話して
「おもろい発想やな」
など、楽しそうな嬉しそうな相槌。

ちっともロマンチックじゃないんだけど
いや、ロマンチックじゃないからこそ、
より本物らしく感じられる。

だけどある日、本物のはずの愛が消えた。

きっかけは、お風呂の桶。

シンプルなデザインのものに買い替えて使ってみると
少しのお湯を汲んだだけで重くて片手で持てない。
桶自体の重さは変わらないのに。
そっか、この桶は淵がまっすぐ平らで指がかからない。
これまで使っていた桶は淵が内側に丸まっていて、
そこに指が引っかかって持ちやすかったんだ。
なるほど、平らの方が見た目すっきりかつ衛生的だけど
丸まっているのには理由があったんだ。

そんなことを機嫌よく話してたら、一言
「文句多いな」

実はこれ、もう十年以上前の話なんだけど、
心が凍ったあの瞬間を
今こうして文字にすることも苦しいくらい鮮明に覚えてる。

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